「あの子、その人にデートDVをされていたの」

「え?」

「ちょうど私は海外留学をしていていなかった時のことだったから私はあとで知ったわ。当時、自分では気づいてなかったから友達にはっきり言われて別れたらしいんだけど……みよりは、元気がなかった。よく笑う子だったのに笑わなくなって、自信も失って『私なんて』って言うのが口癖になった。人と関わることも絶ってしまった。男の人が怖くなって、内定をもらっていたけど辞退して家に引きこもったの。最近、やっと外に出るようになったのに……」


 お姉さんはそう言って寂しそうに笑った。


「今、あの子は、当時と同じことをしてる。今、いただいていた仕事も全てキャンセルして何もしないでボーッとしてる。私の前では作り笑いばっかりして……だけど、水無月さんならあの子の凍ってしまった心を溶かせると思う。あなたと会って、とても楽しそうだったから。あの日の朝も、すごく楽しみにしててね。服、選んで欲しいって言って来たくらい……」


 だからね、とお姉さんは言うと頭を下げる。



「お願いします、あの子に会ってほしい」


 俺は、お姉さんにお願いされて今日の十四時に家に行くと約束した。一応、十五時までの予定だったが一時間ほど早く切り上げても大丈夫。売れ残った分は、みよりちゃんへのお土産にしよう……そう思って。