「人生初の失恋か」

「まだ、振られてない……帰っちゃっただけで」

「そんな泣きそうな顔すんなよ。その顔、写真撮って、高校のグループラインに回すけど」

「……好きにしてくれ、もうどうでもいい」

「重症だな、お前。前だったら『ふざけんな』とか言ってた癖に」


 本気で、好きなんだよ。
 こうなるなら、グイグイいって告白すれば良かった。まだ振られた方がマシだったかもしれない。今までのような関係には戻れなくても、ただ店員とお客としていられたかもしれないのに。


「はぁー……今日はお酒奢るから元気出せって」

「明日、仕事」

「あっそ。じゃあ一杯だけな」


 そう言って和樹はアルコールを頼んで一緒に飲んだが、一杯じゃ酔えるはずもなく気持ちも晴れないままタクシーを呼んで家に帰った。