「……っこんなんじゃ、志侑さんに、会えないや……」


 私は、こんな自分を見られたくないと思ってしまって彼が行ったはずのトイレの方向とは逆方向に歩いた。きっと今の私はメイクがぐちゃぐちゃのはずだからこのまま帰ろうって思う。

 勝手に帰るのは心配させてしまうし、……嫌われたくないと思って連絡だけ入れて家に向かって歩いた。
 歩きながら、もう嫌われるんだろうなと考えていたらもっと涙が出てきて……今頃、気づいてしまった。私は、志侑さんのことが――好きなんだって。



「だけど、もう、会えないなぁ」


 どんだけ優しい志侑さんでも、こんなの困るだろうから。