「サイラ、どうしたん……だ! ち、違う! これは、この部屋しか空いてなかったからだ。もちろん俺は寝袋で寝るつもりだ。サイラがこのベッドを一人で使ってくれ!」


 顔を赤くしてじっとベッドを見つめていたので、すぐにカイルも気づいたみたいだ。この国で男女一緒に泊まるというのは、夫婦とみなされる。未婚の兄弟姉妹であっても一緒には泊まらないから、この部屋を用意されたのもうなずける。


(それでもお金を払ってくれて、なおかつ私は犯罪者なんだから、私が床で寝るべきじゃない? でもそんなこと騎士道精神をもっているカイルが許すわけないよね……。寝袋に寝るにしてもベッドの上で使ったほうがいいと思うんだけど)


 チラッとカイルの顔をのぞき込むと、さっきの私以上に赤くなっている。


(でも伝えるだけ、伝えてみよう!)


 私はまずベッドを指差し、次にお互いを指差してみた。


「ん? どうしたんだ?」


 そのあとに両手を重ね頬に当て、目を閉じて寝るジェスチャーをする。まだ続きがあったのだけど、その動作を見たカイルは驚いて、ブンブンと音がしそうなほと顔を横に振っていた。