そう言って王女は俺に、処刑を実行することを許可した一枚の書類を差し出した。たしかに陛下の印が入っていて、なおかつ持っているのは王女だ。これを偽物だという証拠がない状態では、今はどうすることもできないだろう。


(なにがあっても実行するということだな。やはりおかしい。これだけ急ぐということは、彼女と王女には何かあるのだろうか……)


 しかし今はそんなことを考えている暇もないようだ。王女は俺が何も言わないことを、処刑に賛成したとみなしたらしい。こちらをを振り返ると、楽しそうに笑って言った


「じゃあ、カイルがあの女を、崖から突き落としてね」


 事前に情報を聞いていなかったら、怒りで暴れだしていただろう。俺は震える拳をそっと背中に隠し、了承した。