それは新たに瘴気の穴が開いていることを、会議で報告している時だった。背後からいきなり、ドスンと何かが床に落ちたような鈍い音が部屋に響き、俺はすぐさま走り出した。


「おまえは誰だ! どうやってこの王宮に入ってきた!」


 部下のケリーが声を荒げている。まさかこの王宮に侵入者か! 王宮内にはたくさんの騎士がいる。そのうえ魔力登録者しか、この部屋には入れないはずなのに。


 俺はあわててケリーと場所を代わり、侵入者に剣を突きつけた。


「動くなと言っているだろう。顔を上げろ!」


 見たところ、少年のように見える。シンプルな白いシャツに黒のトラウザーズだろうか。しかし侵入者にしては質が良いな。マントは付けていないが、魔術師かもしれない。すでに腕は縛ってあるが、気をつけなければ。


「グッ……ゲホッゲホッ」


 なんだ? 武器も何も手にしていないうえに、さっきからずっと咳き込んでいる。しかし油断は禁物だ。俺はその侵入者が顔を上げるのを、じっと見つめていた。