「うう! うううう!」

(それだけは盗られたくない! 返して!)


 喉に激痛が走るとわかっていても、叫ばずにはいられなかった。この人は私からどこまで奪おうとするのか。しかしそんな些細な願いも叶えられず、王女はネックレスを床に落とし踏みつけた。


 割れたチャームの小瓶から、カイルの聖魔力があふれ出す。そのキラキラした魔力は、この暗い湿った牢屋の空気に溶け込み、サラサラと消えていった。


「希望を持っているからいけないのよ。だから明日、私があなたを処刑してあげる。一番あなたが苦しむ方法でね」


 そう言ってアンジェラ王女たちは、帰って行った。牢屋に残された私は、割れた小瓶をぼんやり見ている。


(もう疲れた……)


 心の拠り所だったネックレスも壊され、ギリギリ保っていた自分の気持ちが、ポッキリと折れてしまった。勝手に大粒の涙がとめどなくあふれ、拭っても拭ってもきりがない。そのまま私は一睡もせず、朝を迎えた。