サクラはふうっとため息を吐くと、そっと俺のほうに近寄った。やはり聞いたら怖くなったのかもしれない。俺が彼女の肩を抱き寄せると、胸に頭をのせ寄りかかっている。


「でも魔術が返ったということは、二人に忘却の呪いがかかったのですか?」

「ちょっと違うかな。二人は高熱が出て、今までの記憶がないみたいだ。だから話が通じない状態でね。仕方がないから王女は王宮の離れにある塔に一生幽閉となるだろうね。エリックもここからかなり遠い場所にある牢屋で過ごすだろう」
「そうですか……」


 あんな目にあったのに、サクラは二人のことを考え落ち込んでいるようだ。犯罪を犯したとはいえ、後味が悪い結果を知るのは嫌なのだろう。


 慰めるように彼女の頭をなでるが、サクラはなかなか気持ちの切り替えができないようだ。暗い顔でため息を吐いている。するとそんな重い空気の部屋の扉が開き、アメリの明るい声が響いた。


「サクラ様! そろそろ結婚式のお衣装合わせですよ!」


 その瞬間、サクラの顔がパッと明るくなった。そして大きく深呼吸をすると、アメリのほうを振り返る。