「初めてカイルが教会に来た時ね、師匠の体を浄化する練習をしてたの。そしたらあなたは私と師匠が恋人で、遊んでるだけなんじゃないかって疑ったんだよ!」


 目の前にいるサクラはくるりと振り返ったあと、はにかんだような笑顔で俺との思い出話をし始めた。


「なに! そんなことを俺が?」
「ふふ。そのうえ君には聖女の役割をやり遂げられないだろうって、私を馬鹿にしたの!」
「本当なのか?」


(信じられない! いくらなんでも初対面の女性にそんな失礼なこと……)


 本当にそれは俺なのか? と戸惑っていると、サクラはクスクス笑って当時の俺が勘違いした理由を教えてくれた。


「本当だよ。ただね体に入った瘴気を浄化するのは服の上からじゃできないの。だからカイルが来た時の師匠は上半身裸で私は素手で背中をさわってたから、あなたは私たちが卑猥なことをしてるって勘違いしたんだよ」
「そ、そうだったのか……」


 上半身裸のジャレドと、その体をさわるサクラ。その様子を想像しただけで胸の奥がチリチリと痛む。


(ジャレドの体にふれているのは治療だとわかっているのに……)


 自分の心の狭さに、思わず大きなため息が出る。サクラが現れてからというもの、何回も味わったこの苦しい感情。恋愛に関して経験値がまったくない俺でも、これが嫉妬だというのはわかっていた。