食堂から外に出ると私たちは一階に降り、中庭に向かって歩きだした。教会は召喚されてからずっと過ごしてきた場所だ。私が迷いもせずスイスイ歩いていくので、カイルは「やっぱりサクラは聖女なんだな」と呟いている。


「懐かしいな〜! あれ……あそこ」


 目に入ってきたのは、中庭とは逆方向に進む廊下だ。一度目の召喚でよく通ったその先にある場所を思い出し、胸がドクンと跳ね上がる。あそこは、あの先には。心臓がトクトクと早鐘を打ち、気づいたら私はカイルの手をつかんでいた。


「カイル! こっちに来て!」
「え? どうしたんだ急に?」


(お庭も良いけど、もっと素敵なところがあったの思い出した!)


 私は戸惑うカイルをぐいぐい引っ張り、その場所に連れて行く。その行動さえすごく懐かしくて、ほんの少し目の奥が熱くなってきた。


「ここは……?」
「ここは私が瘴気の浄化を練習してた場所なの。それとカイルとの思い出の場所!」


 初めてカイルと会った日、私が聖女だと証明するために浄化を見せた練習場。この場所はあの時とまったく変わりなく、カイルと一緒にいるとまるで時間が戻ったようにすら思える。


 私はくるりと振り返ると、少し照れくさそうに微笑むカイルに昔話をすることにした。