(アルフレッド様……、なぜここに?)


 金色の髪に青い瞳。少し垂れ目ぎみで甘い顔立ちが、いつも優しい彼の雰囲気にとても合っていた。しかし目の前にいる彼には普段の優しさが一欠片も見当たらず、それどころか妹である王女を軽蔑の目で見ている。


 後ろにはケリーさんを筆頭にカイルの部下たちが、殿下の警護をしていた。


「お、お兄様……」


 険しい顔をした殿下が一直線に向かったのは、妹であるアンジェラ王女のもとだった。なにか言い訳をするように王女の隣にいるエリックがモゴモゴと口を動かしたけど、殿下は一瞥(いちべつ)もくれず通り過ぎる。


「アンジェラ。侵入者の審議もろくにせず権力を振りかざしたうえ、勝手に処刑を行うとはどういうことだ?」


 一瞬、王女はその言葉にビクリと肩を震わせたが、すぐに威勢よく睨み返し反論した。


「わたくしは、王宮の安全を守っただけですわ! あの女がなんらかの魔術を使って、無断で王宮に侵入したことはあの場に居た者なら皆知っております! それにお父様の許可もいただいてあるのですから、わたくしは間違っておりません!」