あるところに、両親の愛情を一心に受け、とてもとても大切に育てられてきたお嬢様がいました。


結婚して10年間子宝に恵まれず、40歳を目前にようやく誕生した待望の我が子に、両親がものすごく甘やかした結果……。


宮田(みやた)! これは、わたしが欲しかったぬいぐるみじゃない〜。今すぐ買い直してきてっ!」

「やだやだ。わたし、勉強なんてしたくない。マナーとかお作法とかどうでもいい。わたしは遊ぶの〜」


幼い頃から勉強嫌いで、自己中心的。

人の言うことは一切聞かない。


お嬢様に必要な礼儀作法やマナーのレッスンもサボってばかり。


そんなお嬢様に手を焼き、今まで彼女の元を去っていった執事は数しれず。


有名財閥の小鳥遊(たかなし)グループ社長のひとり娘・小鳥遊 (すみれ)は、とんでもないワガママ娘になっていました。


*****


「菫、ちょっと話があるんじゃが。こっちへ来なさい」


中学卒業を1ヶ月後に控えたある日。


わたしは、小鳥遊グループの会長である祖父・茂人(しげと)に呼び出された。


「おじい様、何ですか?」


屋敷の広い応接間には、ピリピリとした雰囲気が漂う。


直感的に、何となく嫌な予感がするんだけど……。


「こほん。えー、単刀直入に言う。菫お前、春から櫻乃(さくらの)学園へ通いなさい」

「えっ!? わたしが、あの櫻乃学園に!?」