月音の家と煌の家は方向が同じなので、煌、月音、碧人の三人で帰ることになった。

煌、いささか緊張中。

「あの、月音ちゃんのお母さんってどんな方だったんですか?」
 
煌の質問に、隣を歩く月音がこくこくうなずいて、更に隣にいる碧人を見上げた。

「私も聞きたいです父様。大叔父様の話は現実味がなくて……。もう教えてくださいますよね?」

桜木のことを娘に知られないために、碧人は母のこともあまり月音に話していなかったようだ。

娘の言葉を受けて、懐かしそうに眼を細める碧人。

「うん。華音は、少々ばかり気性の狂った人だったね」

「……え」

「は?」

気性の狂った人……? 

自分の奥さんを紹介するとき、そんなことを言う人はいないだろう。

煌と月音が顔を見合わせた。

それを見て、碧人は続きを話しはじめた。

「華音は自分が桜木の娘だと知っていて、その上で、自分の血であやかしを消すのが趣味だったんだ」

「え……」

「か、母様ってそんなやばい方だったのですか……?」

月音が青ざめていく。

桜木の血というものがどういうものか、そして自分がそれを継いでいることも知った月音は驚いたようだ。

碧人は淡々と話す。

「それで桜木家から追い出されて……さすがにまずいと感じたようで、その趣味は改めることにしたようだ。その頃に出逢ったんだよ。お互い高校生だった」

「その頃には父様は神崎を継いでおられたのですか?」

「いや、私の父――月音の祖父が亡くなったのは私が大学生の頃だから、まだ父上がご存命の頃だね。出逢ったときの華音は桜木の名前もはく奪されて、家を追い出されて、かなりやさぐれていたよ」

「母様ヤンキーだったのですか!?」

月音の声が裏返った。

「いやそこまではいかないんだけど、一匹狼、みたいな感じだったかな。触れるものは皆切る、とか」

「お、大叔父様の話と違い過ぎる……」