「月音ちゃーん」

「あう?」

月音はいつも、お昼ご飯は同じクラスの友人と食べている。

今日はそれぞれ持参のお弁当を中庭の一角で食べていたところ、煌が声をかけてきた。

「今週直でしょ? せんせーが呼んでたよ」

「あ、はーい。今行くね」

煌に応えて、月音はお弁当をしまって立ち上がった。

「小田切、すっかり『月音係』だね」

「俺、偵察能力あがってる気がする」

月音の友人のからかいも気にせず煌は応じて、教員室に向かう月音とは別れて教室に自分の昼食を再開しに戻った。

煌も、昼食は男友達と取るのが常だった。

月音は教師の呼び出しの理由に検討をつけながら急ぎ目に歩いた。

先週の日曜日に、煌、黒藤、縁と出かけたが、めちゃくちゃ楽しかった。

最初は黒藤の神々しさと縁の美しさの前に発狂するかと思ったけど、煌が懸命にその場を離れないようにしてくれたおかげで、いつの間にか黒藤とも縁とも気負わず話が出来た。

最近月音の中で、煌が偉大すぎる存在になっている。

月音は推し活のために隠密行動を得意とするので、すぐに物陰に隠れてしまう。

そんな自分を探す必要が生じた際、頼られているのが煌だ。

煌は月音の推し活に付き合っていることもあって、月音の行動を大体読んでくる。

それゆえの『月音係』だ。

「あ、神崎さん」

え? と、月音は信じられない気持ちで振り返った。

だってその声は、そこにいたのは、最推しと言って過言ない白桜だったのだ。

「はっ、なっ、なんで私の名前!?」

「いや、初等部から一緒だよね? 神崎月音さん」

「ぐふっ!」

白桜にフルネームで呼ばれて、月音は血を吐くかと思った。

お、小田切くんどこ!? 腕、腕を掴んでいてください! じゃないと混乱して逃げそう! でも白桜様から話しかけてくださった奇跡から逃げたくない! 小田切くん助けて!!

脳内で助けを求めていると、ふっと目の前が翳(かげ)った。

「大丈夫? 体調悪かった?」

顔をあげると、間近に心配そうな白桜の顔があった。