「………えっと、それは琴が睿霸にお願いしたんですか……?」
わたしの言葉に、琴は自分の短い髪をつまみながら、俺さあ、とまるでため息をつくようにぼそりと言葉を落とした。
「もともと、髪色が明るかったんだよ。えるの毛先みたいな、白に近い色で。だから、黒染めしようと思ってたところに、喵様がやるって言い出して……」
「その時赤に染められたんですね……」
琴によれば、学校内にて染めようとしたところ、それ僕にやらせて!と睿霸が言ったらしく、琴の立場的に無碍にできるわけもなく任せてしまったら、今の髪色にさせられた、というほぼ騙しうちの経緯が語られた。
その時は、怒りを通り越して呆れ果ててしまった、とため息とともに語る琴の横顔は、今まで見てきた中でいちばん疲れた顔をしていた。
「琴の髪色にそんな秘話が……」
「秘話っていうほどの騒動でもねえけどな。まあ、最近ようやく落ち始めたからいいけど……」
「では、髪色を上書きするみたいに新しく上から染めるというのはできたりしないんですか?」
「………あのな、俺は若の目付け役だぞ。喵様に染めてもらった分際で、そんなことできねえわ」
「ここにも立場の弊害が……」



