見たことのない眼差しを、していた。
どう、言えばいいのだろうか。
相変わらず頬杖をついて、伏し目がちで、けれど口元はほんの少し。そう、琴と睿霸が気づかないほどささやかな、弧とも呼べない、まるで長年微笑みをたたえた人の口元が自然とその輪郭を憶えてしまったかのような、とてもゆるかやで、けれど無造作な、例えるなら、……たと、えるな、ら。
………………、………。
わからない。だって、わからない、のだ。
今まで、一度だってそんな瞳を、まなざしを、向けられたことなどなかったのだから。
〝それ〟の当てはめ方も、どんな風に捉えるべきなのかも、ぜんぶ、しらな、………。
……否。……否、否。
どこか、そう、どこかで。
これと全く同じ、ように見えるまなざしを、いつか─────。
「……える?」
「……へっ、」
やんわりと笑む若サマをじいっと凝視していた最中、わたしを呼ぶ琴の声に、意識が、それる。
慌てて琴と睿霸に視線を戻せば、ふたりはいきなり笑い声がおさまったわたしを不思議そうに見つめていて、急ぎ誤魔化すための笑みを浮かべた。
「……アレですね。若サマの顔は万病に効くかもしれません」
「は?」
「へッ?」
「若サマの顔見たら、笑う根源のむずむずがおさまりました」
そう言った、直後。
若サマの両頬を、それぞれ琴と睿霸の指先がつまみ上げた。
「おい若、テメーも変顔しろ」
「それかこの顔に袋かなんか被セて覆っとく?えるちゃんがマた爆笑できるように」
「…………、」
「あの若サマ、ここはいつもの感じで反論していいと思います」



