うそつきな唇に、キス





最近ようやく睿霸が喋る言葉を理解できるようになってきたけど、これならわかるようにならなくてもよかったかもしれない。

無駄に言葉の解像度が高いと、適当に受け流すわけにもいかなくなるし。




「なんか僕今えるちゃんに失礼なこと思われた気がシたんやけど?!」

「気のせいだと思います」




今回は完璧に受け流し、やいのやいのと騒ぐ睿霸を他所に、わたしの袖口をなぜか神妙な面持ちで引く琴がいて。

なんだろう?と思っていたら、おおよそその表情とは不釣り合いと思える至極当然な言葉を吐いた。




「……なあ、えるに一個聞きたいんだけど、若って笑ったことあるのか?」

「……え?」




ぱち、ぱち。

何を言われたのか、どういう意図で言われたのか。


それを推測して、咀嚼して、やっぱり額面以上のものではないことを悟って。



「え、と……、もちろん、あります、けど」




今度は、こちらが困惑してしまう番だった。

……本当に、ふたりとも若サマをなんだと思ってるんだろう。こんな無愛想な顔をしていても、どんな肩書きを持っていても、その大前提には人間の男の子という当たり前があるのに。