うそつきな唇に、キス





今でもだいぶ寄せている(・・・・・)とは思うけれど、本人から具体的な言葉を聞かせてもらえたらもっと寄せられる自信がある。

まあ、芸能人とか二次元の例え話をされてしまったら、本人を見なければならない手間はあるけども。



「え、若に好きな奴とかいるか?」

「好きな子はともかく、好キなタイプはあるんやない?やかましくなイ奴とか、従順な奴とか」

「あ〜」



今回は外野となっているふたりから好き勝手に言われても、若サマは無表情を崩さなかった。

というより、まるで誰かを探し出しているかのように斜め下へ視線を落としているから、そもそも聞こえていないのかもしれない。




「まあ恋愛感情抜きにしたらあるんじゃないですかねえ、人としてこういうのがタイプとかは。そういう感じで今のオメガの婚約者選んでますし」

「えーと、確かソの子が喋れんかったからやっけ?」

「すっげえ失礼極まりないですけどそうなんですよね……。っつーか、える、こういう時定番な好きな食べ物とかは聞かねえんだな」




いまだ考え込むように視線を俯かせる若サマを蚊帳の外にして、わたしへと疑問を投げる琴に苦笑いしながら、至極単純な理由を述べた。



「だって、もう知ってますから。若サマのいちばん好きな食べ物は、カレーですよね?」

「………は?」

「えッ?」

「…………、」




それまで始終漂っていた、この場にいる者たちには似合わない穏やかな空気が、わたしのその一言で、ぴしりと凍りついた。