うそつきな唇に、キス





言葉を守れなかった、希望を叶えられなかったわたしが謝罪したところで、それは今更だ。


失念していた、で済まされない。

わたしは彼の言葉を、彼の希望を、彼の未来を、確かに視て、識ってしまったのだから。


……でも。




「……ごめんなさい、若サマ」




90度、とまではいかないものの、軽く頭を下げて、こちらを振り向いた若サマを己の視界から閉ざした。

そして再度、契約の言葉を吐く。




「次は、もっとはやく戻って来ます。……もしくは、」




顔を上げ、静かに瞬きをする若サマへ、嘘が大前提となる真実とも虚偽とも取れる笑顔を向けた。




「わたしが、若サマのことを迎えに行きますね」




わたしが放った言葉が意外だったのか、はたまた呆れていたのか。

しきりに瞬きをする若サマが少し珍しく、くふりと湧いて来た笑い声を喉奥で押し潰していたら。


ふっと、目の前で、軽い吐息の風が鳴る。




「……では、次はもっと早く来い。二言はゆるさない」




そうして軽やかな風とともに耳に滑り込んできた声は、今まで聴いて来た彼の数多の声の中でも、一等へんな音を奏でていた、ような、気がする。