「……それで、そろそろわたしに会いに来た本題を話してもいい頃なんじゃないですか」
奇妙な感覚から目を逸らすように、話題をくるりとすり替えた。
……もともと、素直にわたしのことを迎えに来ただけじゃないことはわかりきっていたから。
「えー、珍しくえるちゃんと共感できる話題やったけ、もうちョい深掘りしたかったのに……」
「これ以上わたしと話すと哲学的な意味のすきときらいの話になりますが、それでもいいなら……」
「よっしホんじゃあ本題入ろか!」
睿霸が元気よくそう言ったと同時に、渡り廊下と黒棟の境目を飛び越えた。
「まあまズ最初はこれやな」
ほい、と睿霸が軽い調子でブラザーの内ポケットから取り出したものに、首を傾げた。
「……なんですか?その書類の束」
「ええ、もう忘レたん?あの時、えるちゃんが頼んデきたやろ。若くんの解毒とは別ノ、」
──────もう一個のおねがいごと。
そう言われた瞬間、あの日の会話がフラッシュバックする。
〝────睿霸に、頼み事があって来ました〟
〝……ナら、応接室で話そか、……や、その前に一個確認やけど、頼み事はひとつでええやんな?〟
〝……………いいえ〟
ふたつ、頼みたい事があります。



