うそつきな唇に、キス





それはつまり、若サマがそう思われるような言動や態度をしたということで、こればかりは相手側ではなく若サマ側に比がある。わたしも擁護できはしない。


けれど。




「……でも、アレの発言は違います。若サマと直接会話したこともなければ、見ることもしないような人間が若サマのことを侮辱するだなんて、烏滸がましいにもほどがあると思いませんか?」




ようやく納得できる形で言葉に落とし込めて、割と満足しながら睿霸を見上げた、ら。

なぜか顔を両手で覆った睿霸が大きなため息をついた後、ヤケクソにも似た叫びをあげた。



「…………………やネ〜〜〜〜!!!!いやあ知っとった、知っとったよ、えルちゃんがそういうタイプやて……」

「……え、突然どうしたんですか?」

「………えるちゃんに惚れた腫れたした奴は大変そうやなあっちゅーことやヨ」

「…………?……はあ、」




何言ってるんだろ、睿霸。


……わたしのことを恋愛的な意味で好きになる人なんて、そもそもいないだろうに。


そう考えた時、ふと思い出した。


並んで月夜を去る、背後にいる者たちの後ろ姿を。

そんな彼らを、疎ましそうに睨み据える視線を。


……ああ、そうだなあ。

わたしも、そうかもしれない。



「あの、睿霸。以前の言葉、訂正しますね」




そう言ってもどうやら睿霸には心当たりがなかったらしく、片眉を上げて怪訝そうな顔をする姿に、ほんのりと苦笑混じりの冷笑がこぼれた。




「やっぱり、わたしもアレがきらい──────いえ、〝だいきらい〟ですよ」




刹那、睿霸の瞳に、見たことないほどの喜色が宿った。