「でも、意外やったワ」
「え?何がですか?」
するりとようやく捕まれていた手を離されて、わたしの片手は背中に。睿霸の片手は後頭部でもう一方の手と組み合わさった。
「えるちゃンがアイツらにブチギレたことや。えるチゃんは自分に全然興味あらへん子やと思っとったけ」
「……まあ、間違ってはないですけど……。あと、わたし別段そこに怒ってはないですね」
そう言うと、やっぱり睿霸はなぜかぐっと眉根を寄せて。
「……えるちゃんはカイブツなんかやなイやろ。ただのえゲつない化け物なだけやん」
むいっと唇を突き出して吐かれたそれは、何も知らない他者が聞けば誤解を招くものでも、彼らからすれば、わたしに似合わない賞賛になる。
そうして、似合わないことを知っているから、どうしても苦笑を返すしかなかった。
「……っちゅーか、ほんならドこに怒っとったん?やっパ若くんをカイブツ言われたのが頭に来たと?」
「………うーん、」
……わたし、一体どこに腹が立ったんだろう。
己の意思に反した、は言い過ぎだけど、予期していなかった自分の行動原理は今なお正しく理解できていないから、言語化するのが難しい。
……でも、そう、だなあ。
例えば。
「……わたし、睿霸が若サマのことをカイブツと罵ったとしても、怒らないと思うんですよね」
「……なっ、ナんで?!」
見上げた睿霸は、まるで訳がわからないと言うように目を大きく見開いていた。



