わたわたと己のポケットから取り出したハンカチを、使いかけやけどええよな?!えるちゃん気にするタイプやないよな?!と確認するような言葉を叫びながら、問答無用で鼻に押し当ててくる睿霸はやっぱり、へんなひとだと思う。
……そういえば、睿霸と会う前にも、こんなことがあった気がする。
今は上から見下ろしてくるひとも、目の前でティッシュを押し付けてくるひともいないけど。
「そんなに慌てなくても、止血すれば血が出てたことなんてそうそうわからないと思うんですけど……」
「いやそれはソうやけど!やって、やッて、……っ、」
ぎゅうっと、痛いくらいに鼻を摘んで下を向かせてくる睿霸が、なんだかおかしくて。その隙間で、いつもの空気感になったことに安堵して。
「……まあでも、睿霸が通常運転になってくれるのなら、血を流した甲斐もありましたね」
「……へ、何、言うとんノ」
「さっき、態度がすこしぎこちなく感じたので」
違いましたか?と聞くと、なぜか睿霸は気まずそうに視線を逸らして。
「…………、それは、その、ゴめん、なあ、」
「……理由を聞いても?」
「いや、……んー、えっと、なあ、……えるちゃん、チょい、こわかった、から、」
その言葉に、思わずちいさく目を見張った。



