その言葉で、ようやくわたしの言わんとすることが理解できたのか、喉の奥から引き攣ったような、肺に残った最後の酸素で遺言を残すかのような口ぶりで、ソレは息を吐いた。
「……な、い。特別な、意味、なんて。ただ、罵倒のために、えらんだ、だけ、だ、」
「………そうか、」
その言葉に、捻り潰す勢いで押し込んでいた首元から、ゆっくりと足を退けた。
瞬間、押し潰されていた首元を押さえながら、ソレは息をするためにごほごほ咳込み始めて、同時にわたしを揺れる眼で仰ぎ見る。
「……よく覚えておけ」
静かで、平坦な口調。
しかし、そこに確かに存在する威圧も、愚者を踏みつける傲慢も、己の首元に見えない刃を突きつけられている恐怖も。
ぜんぶが全部、いずこかの過去に、既に生まれ落ちたモノ。
「─────次はない」
転がっている女の子とは違う、低く、けれど落ち着いた声は、その子とはまた別の意味合いで、ひどく彼らの脳髄に刻み込まれる。
「もし次、おれの前に姿を表すようであれば、その首、無事では済まないと思え」
そう見下ろしながら吐き捨てて踵を返した時、ソレがどんな表情をしていたかなんて、興味の欠片も喪失していたわたしには、まるで関係のないことだった。



