睿霸が渡り廊下へと踵を返していくのを見届けたのち、口角を消して、再度己の足元にいるソレを見下ろした。
「……それで、お前は口を開く気があるのか?ないのか?」
ぐ、と先ほどよりも足に力をこめれば、かはっ、と足元で吸い込み損ねた息が詰まるような音が聞こえたかと思うと。
「……で、た、」
「…………、」
「すみま、せん、で、した、」
がっ、と。動かすには至らない力でわたしの足首を掴んだソレは、まるで見当違いな言葉を吐いた。
「俺の言葉が、そんなにお前の気に、さわったのなら、俺ひとりを、好きに、してくれ。……だから、他の奴らには、手を、あげ、ないで、ほしい、」
そんな言葉を吐いたソレに、果たしてわたしはどんな顔を向けていたのだろう。
ただ、足首を掴んでいる手から伝わる振動で、好感などまるで待てない、逆に恐怖を煽るような表情していたのは容易に想像がついた。
「……お前は一体何を勘違いしている。おれは、お前の謝罪や訂正に毛ほどの価値も見出していない」
そう吐き捨てると同時に、足首を掴んでいた手を乱雑に振り払い、その手諸共、首元を再度踏みつけた。



