うそつきな唇に、キス





「さっ、……サクラバくんから離れてください!」




その時、わたしの思考を一刀両断するように、震えた高い声が空気を切り裂いた。



「……確かに彼の言葉は褒められたものではありませんが、そこまですることじゃっ、」

「──────だまれよ(・・・・)




それは、言い訳すら許さぬ声。

それは、黙ることを強制させる言葉。


─────それは、息をすることすら憚られるような、殺気。



わたしが今まで聞いたどの瞬間よりも、きっと、睿霸の怒りを体現している声音だった。



「えるチャンは、今、ソレにだけ口を開くことを許可してんのが、聞いててわからねえかなあ。わかったらさっさと口を閉じろ?」




鋭い言葉。アルファとしての、圧倒的強者からの命令に逆らえる人間など、この場に、いるわけがなかった。


……が。




「………あの、」



それは、自分の喉からこぼれ落ちたとは思えないほどに、落ち着いた声だった。

平静で、だからこそ今この場において、最も冷酷だとも捉えられる、熱をもたない声。




「睿霸、ご助力感謝いたします。……ですが、」



見上げた睿霸の千草色の瞳に、口角をあげたわたしが映っていた。




「手、及び口出しは無用です」