「すみません睿霸、お待たせしてしまって」
そんな頭をもたげた疑問をどうでもいいことだと割り切って後ろを振り返ると、やっぱり呆れたように苦笑いをしている睿霸がいた。
「ええよ、気にセんで。えるちゃんらしい容赦ないとこが見ラれたしなあ」
「……なるほど?」
「それ絶対わかっとらん奴ノなるほどやん」
だって、待つのを気にしない理由にわたしの容赦のなさが入ってくる意味が、よく理解できないから。
小首をかしげても、仕方ないと思ってほしい。
……そう思いながら、睿霸と一緒に若サマと琴が待つ黒棟へと歩き出していた、時。
その火蓋は、しずかに、けれど確かな悪意を持って、落とされる。
「─────やはり、怪物と言われるあの若頭の側近となる人間も、ただのカイブツか」
─────憎々しげに落とされたその呟きに、ぴたりと、足が止まった。
それは、いつか。
誰かから聞いたから。
〝…………そっ、そういえば、さっき若サマに、わたしは怪物じゃなくて化け物だって言われたんですけど、そのふたつに明確な違いってあるんですか?〟
〝ん?もしかして、教えてなかったか?〟
〝はい。教えられてないですね〟
〝あー、そっか。悪い。……そのふたつはな、まあ、こっちの世界で浸透してる高度な嫌味っつーかなんつーか。化け物はこっち側では賞賛の意味としてよく使われてんだけど、〟
怪物は──────、────……。



