うそつきな唇に、キス





わたしの淡白な返しに、睿霸はふっ、と。

苦笑になりきれなかった、微笑みを落とした。



「……あーあ、なんヤろなあ、これ」

「……?る、」

「まあ、そんなラはよ行っといで。ちゃあんと、待ッとるけ」

「いえ、待たせるのは忍びないので睿霸は先に行っててください」

「なンっっでやねん!!!!ここは思わズきゅっんってするとこやろ!!!」

「なんですかその擬音……」




つい後ろ髪を引かれてしまうような。

あるいは、反射的に手を振り返してしまうような。


そういう人、だと思った。

若サマや琴とはまた違う、へんなひと。


今はこんなに近くにいるのに。すぐに戻ってくるのに。

また軽く耳の横で手を振る睿霸に、なんとなく、へんなかんじがした。



……あの雨の日に、文字通り(・・・・)、初めて彼のあんな顔を見てしまったから、だろうか。

……だとしても、わたしがそれで何かを変える必要は、変わる必要は、どこにもないのに。




「……あの、」



そんな悶々とした考えを抱きながら、声をかけてしまったのが、おそらくダメだったのだと思う。




「……一体誰ですか?今私達が忙しいことをおわかりに─────ひぅっ、」




振り返った彼女らが、わたしの姿()ではなく、わたしの()を見て、固まってしまったから。