うそつきな唇に、キス





────30分。


おそらく、それくらいは経ったはず、なのだけど。

声、否、怒号に近い苛立った声が室内にて錯綜する中、端に寄せられた書類は、未だ手付かずのまま。




「なあ、ここって……、」

「あともう少しそっちの予算削れない?予算的にこっちが足りなくなりそうなのよ」

「バカ言うな。こっちもこっちでカツカツなんだぞ」

「はあ?!バカって何よ!バカ、っ、……て、……」



絶賛勃発していた言い争いをわたしが見ていたことに気づいたのか、男の子と口論をしていた女の子の声は段々尻すぼみになり、しまいにはふいっと視線を逸らしたまま書類の束に頭を突っ込んでしまった。


……え。そんなにわたしと目を合わせるの、嫌だったのかな。やはり、なるべく視線を合わせないようにした方がいいのだろうか。

……っと、そんなことより、だ。


ちら、と。その男女の奥にいる、生徒会長の、そのまた隣にいるメガネの人へ目を向ける。

……あの人、この前会った暴走族関係者、に似ている。

似ている、というよりも、ほぼ本人と言って相違ないだろう。あの時はっきりと顔は見えなかったけれど、声音、立ち姿、所作、その他諸々が該当の人物と遜色ないほどに合致しているし。