うそつきな唇に、キス






コン、コン、コン。

軽快な音を、三度、鳴らした。



「どうぞ」

「失礼します」



中から若サマのような、落ち着いたよく通る声が鼓膜を揺らし、ゆっくり引き戸を開ける、と。



「……っ!!」



がた、と。複数の椅子が軋む音が響いた。


けれど、先程教室でされた、視線を一斉に床へ向けられる、ということはされず。ただ、わたしの方を見てひたすらに目を大きく見開かれた。


……正直に言うと、意外だった。

ここでも、また教室の時の二の舞になると思っていたから。



「お忙しいところ失礼致します。東歌組の若頭サマより、書類を預かってまいりました」



丁寧にお辞儀をしながらそう述べると、がたがたと、さっきよりも慌ただしく、けれど決して恐怖が込められていない椅子の音が響く。



「ああ、こちらこそお忙しい中すみません。本来こちらから受け取りに行かなければならなかったのに……」

「……あなたが、生徒会長の茨原さま、でしょうか」

「はい。ご挨拶が遅れました。僭越ながら、この学校の生徒会長を務めさせていただいている、茨原です」