「わかりました、一階の端ですね。ご丁寧にありがとうございます」
「…………、おい、」
用も済んだことだし、あまり良い印象を持たれていないようだったからさっさと目の前から消えようとしたのに。
追うように二の句を告げられて、振り返らざるおえなくなった。
「俺の、……彼女を見なかったか?」
「彼女さん、……というと、」
あの、攫われそうになっていた子、だろうか。
確か、えみり、と呼ばれていたと記憶している。
探るように見下ろす視線を見るに、いまだ疑念が晴れていないらしい。
おかしいな、あの時確実に睿霸が誤解を解いてくれたはずなのに。……まあ、わたしや睿霸が裏社会側の人間だから、そもそも信じられる理由がない、と言われれば納得せざるおえないけれど。
……でも、こちらとしてもあんまり関わりたくはないんだよ、なあ。
また睿霸が機嫌悪くなりそうだし。あの時のことを若サマに知られたら、お説教されちゃいそうだし。
「……見てませんが……。彼女さんがどうかしましたか?」
たくさんの思考が刹那的に脳内を駆け巡り、とりあえず見ていない、ということにした。
「……いや、見ていないならいい。もし見かけたら、俺が探していたと伝えてほしい」
「はい、かしこまりました。では」
ぺこり、とお辞儀をして、再度背を向ける。
嘘といえば嘘で、本当と言えば本当のこと。
─────ここに来るまでに聞いた、聞き覚えのある彼とは別の声の人物を反芻しながら、生徒会室へと足を向けた。



