うそつきな唇に、キス





振り返ると、そこにはいつぞやの銀髪総長さんのお姿があった。

名前……は、そういえば聞いていなかったし、そもそも名乗っていなかったことを思い出す。



「おま……、や、あんた、……あなた様、は、」

「わたしにその敬称は不要です」



わたしの姿をその眼におさめた銀髪総長さんは、呼び方を幾度と変えたけれど、あまりに不釣り合いな名称をつけられそうになったので、慌てて口を挟んだ。

わたしは、サマをつけられるような人間ではないから。



「先日は名乗らず失礼しました。改めまして、わたしは東歌組の若頭サマの側近、」



このあと、一瞬言葉に詰まった。

兼婚約者、という文字列を入れるかどうか、逡巡してしまったから。


……まあでも、そんなに使っていないし、そもそも若サマが一時的に用意してくれた席でしかないから。今はもう側近と呼んで差し支えないと思うし、言わなくていいかな。

そう判断して、代わりににこりと笑みを付け足した。



「……の、えると申します。以後、お含みいただければ幸いです」