うそつきな唇に、キス




まさか若サマにも振り返されるとは思っていなくて、ちょっと面食らってしまった。


どちらかというと、振ってくれた琴と睿霸に形式的に振り返しただけだったから。

それが正しいものか、少し疑問を持ちながら。



そして、そんな3人にもう一度、軽く手を振りかえした、時。

窓に映る自分の表情に、足が止まってしまいそうになった。



─────あれ。わたし、こんな表情できたっけ。



眉を下げて、仕方なさそうに苦笑いしているようで、どことなくそれだけではないものが混じっているような。そんな、顔。

微細だけれど、でも、今までわたしが無意識下でしてきたどの表情とも、違う気がして。



…………、ふうん。

わたし、こんな顔、できるようになっていたんだ。


いいことを知れた(・・・・・・・・)


緩みそうになる口角を意識的に編み上げて、さっきと全く同じ表情を取り繕う。


表情とは、騙すための最も効果的な手段なのだから。