うそつきな唇に、キス





こちらが気づいたことに、あちらも気づいたのか。

それとも、もともとそれが目的だったのか。



「!─────、!!」



残念ながら防音性が高かったせいで声は聞こえなかったけれど、わたしと目が合うといの一番に、窓に身を乗り出しながら睿霸が大きくひらひらと手を振って、何かを叫んでいた。にこにこ満面の笑み付きで。


たぶん、あの口の動きから推察するに、えるという名前を叫んでいたんだと思う。


次いで、窓枠に頬杖をついていた琴が、眉を下げながら、これまたひらひら〜と手首だけで手を振ってきた。

困った風に笑いながら、が ん ば れ、と口パクで言ってくるあたり、わたしに押し付けた自覚はあるらしい。


そして、その隣にいる、若サマは。



「………、」



腕を組んで、窓に寄りかかっている体は琴の方に向き直っているのに、顔だけはじいっとこっちを見つめているから、なんだか少しあべこべで笑ってしまいそうになった。