そんなわたしの疑問を掬い取るように、琴は小首を傾げた。
「もしかして、えるにはまだ言ってなかったか?」
「え?何をですか?」
「若がこっち側の裏生徒会長、みたいなことしてんの」
「うら、せいとかいちょう……?」
なんだろう、それ。というか、生徒会長に表も裏もあるのだろうか。
「ほら、白棟と黒棟はほとんど接触する機会なんかねえだろ?けど、こういうイベント事ではどうしても関わらなきゃいけない時が来る。そういう時に、ふたつの棟を代表する人間がやり取りする決まりがあんだよ。そんで、若がこの学校に通い始めた年から、毎年その役回りは若に回ってきてるって訳」
「なるほど……」
たぶん、大人数でこういうことを決めようとしたら、必ず揉めていたんだろうなあ。
表社会と裏社会の人間が交わること、それ自体が揉める要因となる。
「わかりました。これは誰にお届けすればいいですか?」
「2年3組に在籍してる、茨原って男子に渡してくれるか?そいつが生徒会長だから」
─────そんな言伝があり、わたしは今、白棟へと赴いているのだ。



