うそつきな唇に、キス





「毎年毎年めんどいけどな。しねーと俺らがどやされんだよ」

「ほんま、こっち側にヨう使える人間おればええんやけど、んなもんぽっと湧いて出てきてくれ……、……や、該当者にえるちゃんおったわ」



ひどく面倒くさそうな、煩わしい空気を隠そうともしない琴と睿霸に、思わず苦笑いが漏れた。



「ところで、なぜこの人員のところに、御三方とわたしの名前があるんですか……?」

「……今年は、おれ達が駆り出されることになったからだ」

「……えっと、確認なのですが、一応御三方はお忙しい身ですよね?」

「まあ、俺らに限らずこっち側の人間は結構多忙だな。だから毎年黒棟側は文化祭参加が免除されるかわりに、警備用の人員貸し出せーって要請きたりすんだよ。で、それを今まで散々他に回してきてた俺たちに、ついにお鉢が回ってきたってわけ」




そんな琴の解説を耳に入れながら、ふと手に持っていたプリント、否、書類と呼べるほど理路整然と、反論の余地など許さないとでも言いたげに完璧に組まれたものを見下ろし、疑問が浮かぶ。



「でも、なんでこんなものを若サマが持ってるんですか……?」



教師が作ったのなら、その人が持っていけばよかったのでは……?