シン、と。落ちた沈黙。
その男の問いかけは、真向かいの男に向けられたものではなかった。
その背後にいる─────気配を消して佇む赤髪の男のもとにかけられた声。
声が向けられた先が赤髪の男にも理解できたのか、今まで影に、空気に徹していた男はひっそりと口を開いた。
「………一般的に考える予想でしたら、やはり殺し屋の線が妥当かと。並はずれた身体能力に観察眼、瞬発力、反射神経と、殺し屋には持ってこいの性能を備えていますし」
「でも、えるちゃんに質問してみたらそっちの経験ないって言われちゃってさあ。……ボクは今んところ、上の関係者か、同族のスパイあたりが濃厚だと思ってるけど、若クンの予想は?」
赤髪とタトゥーの男、双方の視線を浴び、漆黒の男は軽く目を伏せ、端的な言葉を紡ぐ。
「………犯罪のプロフェッショナル」
「……あー、」
「うっわあ、悔しいけどめちゃ納得できる〜」
これには、赤髪とタトゥーの男はほぼ同時に深く頷いた。
それほど、漆黒の男の言い分は的を射ていたのだ。
暗殺者でも、スパイでもなく、犯罪のプロフェッショナル。
本人が聞けば、とても不満げに顔を歪めるのだろう、と男は誰にも気づかれることなくほくそ笑む。



