「……える。気づいているだろうが、おれは気にしていない」
「はい。……その、でも、」
若サマが気にしていないというのなら、気にしなければよかった。
事実、した側であるわたしも然程気にしてはいなかったから。
ただ、それはとても、とても大事なものだとも思って。
「……わたしでは、不適任だったと言いますか」
「大前提として、えるはおれの側近であり婚約者だ。不適任ではない」
「……同意を得ずにしてしまいましたし、」
「おれの意識が混濁していたのだから、同意を得るには難しかったはずだ。まずえるはおれが経口摂取にて毒を服用したことがわかっていたのだろう?ならば、おれに口付けることがどれほど危険かわかっていたはずだ。それを知っていながらしたことは、責められるものではないと思うが」
「うっ……、」
正論、正論、正論のオンパレード。
正直、この気持ちを言葉に落とすのが、単に難しい。
どう言えば若サマに伝わるのか、語彙力は過分にあるはずなのに、ぴったりな言葉が思いつかなかった。
「……奪った側で言うのならば、えるだけではないだろう。おれも、えるにさせてしまった責任はある」
その淡々とした声に、首が取れてしまうほど思い切り首を横に振った。
「それはないです!わたしが、勝手にしたことなので」



