……や、でも、怒っていなくても、後々気にする、かもしれないから、ここは正直に言ったほうがいい、よね。
「………その、緊急事態とはいえ、若サマに粘膜接触をしてしまって、すみませんでした」
「………………………、」
瞬間、ふたりの顔が死んだように見えた。
いや、これは死んだ、というよりも、あまりに突拍子がなかったから、表情がどこかに吹き飛んでしまった、が正しいと思う。
「………………なあ若、俺、接吻のこと粘膜接触なんて言ってる奴見たの初めてなんだけど」
「奇遇だな、おれもだ」
「っつーか、もとは人命救助だろ。逆にそれ以外になんかあるか?」
「ないです、けど……」
「若も人命救助だと思うよな?」
「……ああ」
「ほら、若も気にしてねえって」
解散解散、みたいな空気になりかけて、慌てて言い募った。
「そ、それとこれとはまた話は別と言いますか……!!確かに人命救助でしたけど、若サマの唇を奪ってしまったんです、ここは一度身の程を弁えさせるという意味でもやっぱり切腹した方がいいと思います!」
「お前ほんっと変なところで潔いよな!なんでそこまで切腹にこだわる!?」
「切腹なら臓器を避ければ重傷になりにくいので……」
「まさかの保身」



