ぽすん、と。
向かい合うようにして拭いていたわたしの肩に、前から若サマが倒れ込んできて。
「……だから、喵に鞍替えなど、してくれるなよ」
「しっ、しませんよ!」
まさかそんな風に見えているとは、思われているとは露ほどにも思っておらず、食い気味に否定した。
……すると、若サマは私の耳元に手を持っていって。
「……では、これは、どういうつもりだ、」
「あっ、」
ぺりっ、とシールのようなものを剥がされる感覚で、思い出した。
そういえば、睿霸にわたしだとバレるからって、タトゥーを隠すシールを貼られてたんだった。
おかげで若サマにあらぬ誤解をされそうになるとは……!!
「えっと、その、わたしだってわからないようタトゥーを隠していた方がいいって睿霸に言われまして、それで、あの、」
わたわた、言葉も纏まらないうちに誤解を解こうと口を動かして、意味のない声を上げていた時。
「……えるは、」
それはとても、ちいさな声。
運転席に座っている琴には決して届かない、星が瞬く隙間のような音だった。
「……えるはおれの、……おれだけの、側近で、婚約者だろう。……だから、勝手に、いくな」



