うそつきな唇に、キス




わたしの突然の行動に気が削がれたのか、琴も信号が青になったところで軽くため息をつき、運転を再開した。

若サマ、案外大人しい。

……や、何か言う気力もないのかも、と思っていたら。



「………える、」

「な、何か不手際がありましたか?!」

「そうではない。……その服は、もう、着るな」

「え、」



唐突に投げ出されたその言葉は、ぴしりとわたしの思考を停止させた。



「……この場で脱げばいいですか?」

「曲解がすぎる。そこまでは言っていない」

「……その、似合ってない、です?」



睿霸からは、褒められたんだけどな。

人の好みは千差万別と言うけれど。確かに、ここまで鮮やかな赤は、若サマの好みではないだろう。

若サマは、落ち着いた色合いが好きだから。



「……似合っているからこそ、困っている」

「……え、」



なんて思っていたから、驚いた。

……似合っている、んだ。いや、似合っているのと好みはまた違うのだろうけど、それでも。

……なんだろう、これ。



「えるが望むのならば、似たような物をいくらでも用意する。……欲しいものがあれば、おれが贈る」