「あ、え、っと、あの、若サマは、何も、悪くないんです。わたしが、ちょっと安心して、涙腺が緩んだだけで、」
「でも若が泣かせたのは事実だろ」
「ゔっ……、」
なぜこういう時だけ痛いところをついてくるんだろう。
いつもはわたしや若サマのお目付け役みたいなことをしているのに。
「え、あ、う、わ、若サマ、体!体と髪拭きましょう!」
一触即発、のような空気が流れ始めたところで、それを一刀両断するため、慌てて後ろから黒いタオルを引っ張り出した。
「……先にえるが拭け」
「何言ってるんですか!若サマはまだ病み上がりもいいところですよね?若サマが最優先に決まってます!」
異論は認めない、と言わんばかりに若サマの髪の上へタオルを引っ掛けた。
「……その、わたし他人の髪を拭くのは初めてなので、痛かったりしたら、言ってください」
なるべく。なるべく傷つけない手つきを意識しながら、きれいな髪の毛に染み込んだ水滴をタオルの中に集めるように拭いていく。



