うそつきな唇に、キス






「っおい若!急に車から飛び出すなよ!!」

「…………、」



あれから数分もしないうちに、路地を反対に抜けた先に止めてあった琴が運転する車に、わたしと若サマは乗り込んでいた。

そして、その瞬間飛んできた琴の怒号に、若サマは耳を塞いでいて。



「あとえる!!お前もお前だ!!!なんかするなら俺に相談してからにしろ!若がダウンしてる時なんか特に!!!」

「ご、ごめんなさい……」



わたしもそれはもうこっぴどく叱られた。

ぐちぐちぐちぐち、報連相はしろだの、なんで頼る相手がよりによって喵様なんだよ、とか。


……ほんとうに、ごめんなさい。



「っつーかマジであれ以降怪我はしてな、」



そう言って、赤信号で後部座席を振り返った琴の顔が、般若から驚愕へと変わった。



「……える、泣いたのか?」

「えっ、」



まさか、琴に気づかれるなんて思ってなくて、反射的に短い声をあげてしまって。

それは、肯定だと言っているようなものだった。



「──────誰が、えるを泣かせた?」



刹那。地獄よりも猛々しい憎悪を滲ませた声が、車内の空気を張り詰めさせた。