うそつきな唇に、キス





まさか、まさかそんなことを言われるなんて、予想してなくて。

誇っていい、なんて、言われると思って、なくて。



「……っ、」



ぼやけた視界が、さらに輪郭を不明瞭に、世界を歪に変えていく。



「っ、なら、今度からは、絶対、ぜったいに、毒をわざと呷るなんて真似、しないでください」

「……気づいていたのか」

「気づかないわけ、ないです、」



食事などに気をつけている若サマが、自分の肌に触れるものに気をつけている若サマが、毒を、それも経口摂取したなんて、そんなの気づいていながら飲んだくらいの理由しか思い浮かばない。



「せめて、……、せめて、わたしか琴のいずれかには、前もって知らせておいて、ください。飲んだ後でも、どちらでも、いいですから、」



見たところ、本当に回復しかけのようだし、今回はよかったけれど。

せめて、琴にくらいは教えておいてほしい。そうしたら、わたしもなんとなくだけど、察せることはできるだろうから。



「……わかった。次からは、えるに事前通達をしておく」

「そこは琴じゃないんですね」

「アレはしてもしなくても喧しいだけだろう」

「さすがに琴が不憫に思えてきました……」











─────初めて他者に触れられたそれは、

不意打ちではない雨。



無意識に流れたあの日とは確かに違う、

意図された嘘混じりの雨粒だった。