うそつきな唇に、キス





「……えるには、おれが屍にでも見えているのか」

「……いいえ。けど、若サマ、すごく冷たい、ので、」

「…………、」



人の体温とは思えないほど、冷たい。

否、冷えている、と言えばいいのだろうか。


まだ病み上がりなのに、傘もささずにこんなところに来たから。


まるで、生きながら、しんでいるようで。



「……ほら、これでいいか?」



冷えた手で、冷えた体は温められない。

きっと、ずっと、一生冷え切ってしまった手では。


そんなひんやりと肌を刺して、気を抜いたら締め上げてしまいそうな手は、躊躇いなく彼の首へと導かれた。


……脈、ちゃんと、ある。

わざわざこれを確認させるために、わたしの手を誘導したのだろうか。

……わたしの、手、を?



「どうだ。確証は得られたか?」

「………、」



わたしの両手の上に、若サマの手が重なっている。

そこから流れる微かな体温も、ドクドクと脈打つ肌も。

生きていることを、証明していた。



「……った、」

「……?える、」



伸ばされた腕をだらんと胸元まで下ろして、額も胸にくっつけて。

若サマのコートの襟を、くしゃりと歪むほど強く、掴んだ。



「生きてて、よかったあっ……」