うそつきな唇に、キス





そして、吐き出された言葉に、ちいさく息を呑む。



「……あの時、聞いて、」

「ならば、」



わたしの言葉を遮って振り返った若サマの顔は、相変わらず無表情で、冷たそうで。

いつもより少し、顔色が悪そうに見えた。



「えるのことは、絶対におれがころしてやる」



今にも離れそうだった腕が、再度掴み直される。

そして。



「……だから、おれの許可なく勝手にいなくなるな」



まるで雨から守るように、あるいはわたしに覆いかぶさるように、囲い込まれた。

……否、だきしめられた、の方が、近いかもしれない。



「わ、かさま、」



引き寄せられた腕は若サマの胸元で蟠って、なかなか解けそうにない。

否、脱出できそうになかった。



「あの、若、サマ、」

「………、」



なんでこんなことをされるのか。合理的な理由なんて何一つとして思い浮かばなくて。

本当は、それを。……こうしている理由を、聞こうと、思った、のに。



「……いきて、ます、か、」



自分の口から溢れ出た言葉は、笑ってしまえるほどに、雨に流されてしまいそうな嘘だった。