うそつきな唇に、キス




「………、」

「…………、」



どうしようどうしようどうしようどうしよう、どうし、よう。


絶対に若サマ、怒ってる。

こんなに若サマと無言が続いた空間は、初めてかもしれない。……いや、いつも食事してる時は、これくらい静かだけれど。



「あ、の、」



なんでここにいるんですか、とか。

体調悪いところに雨に打たれていたら、余計体壊しますよ、とか。

……怒ってますか?とか。


たくさん、聞くべきことはあったはずなのに。



「……そく、」



掴まれた手首が、いまにも、抜けそうだった。



「やく、そく、……やぶって、ごめんなさ、い、」



か細い声、だった。

多少、震えていたかもしれない。


雨にかき消されても、おかしくなかった。

それでも。



「……えるは、おれにころされたいのだろう?」



若サマの足が、ぴたりと止まった。