うそつきな唇に、キス





雨の中、路地を進んだ先にある細い十字路に立つ。

きょろきょろ四方を見渡すと、右手の方に見覚えのある車が止まっていた。


その中から、ひとり傘をさしながら雨の中に出てきて。


ひらり、と片手を振る姿は、数十分前に見た睿霸その人だった。



「えるチゃん、お疲れ〜!」

「お疲れ様です。……あの男性は?」



機能性にかけた高いヒールの靴で駆け寄ると、睿霸は麗孝さんが別の車で連れて行ったと教えてくれた。



「ならよかったです。……でも、あそこからどうやって連れ出したんですか?」

「ンー?ちょーっと従業員の人に協力シてもろただけや。体調悪い連レがおるみたいなんで、スタッフルームから外出してあげたいんですけどーってな」



ニコニコと悪気なく言う睿霸に、ドン引くでも感心するでもなく、ただ苦笑いを落とすにとどめた。

だって、睿霸らしいなと思ってしまったから。



「あ、そうだ。これ、どうぞ」

「……なんヤ?コれ」