うそつきな唇に、キス





声を正確に覚えられないように。

あの男性よりも、この情報屋の子はしっかりしているらしい。


……でも、見た感じだと、おそらく。



「あの、お連れの方でしたら、こちらを先程の男性にお渡し願えないでしょうか」



がさごそバッグを漁ると同時に、すぐに連絡を入れられるよう、つけっぱなしにしていた電話帳の画面に唯一登録されている睿霸の名前をタップ。二度揺れたのを確認したところで、通話を切った。

わざわざ場所を伝える必要は、ない。睿霸は連絡をくれたらすぐ行くと言っていたから。たぶんだけど、このスマホにGPSでも入れてるんだろう。


そしてバッグから取り出した、こちらも睿霸支給のお財布の中にあった一万円をカウンターに置いた。


……ついでに、カウンターに置かれていた物に目を走らせるのを忘れずに。

ワイングラスがふたつに、黒いスマホが1台。

たぶん、あの中に交換する予定だった、もしくは既にした情報が入っているのだろう。


あれから抜けることができたらいちばんよかったんだけど、……さすがに無理がある、かな。



ドレスコードとはかけ離れたフード付きのコートは、着て入ったのではなく、持ち込んだ物と推測するのが妥当。

その下にはピシッと着こなしたスーツが垣間見えていて。


……あ、やっぱり、あった。