「あ、えるちゃん、ちョい待ち」
独特なイントネーションに呼び止められて振り返ると、さっきまでかけていなかったサングラスをかけた睿霸が、いまだバイブ音が鳴り続ける自分のスマホを揺らしていた。
「もしヘルプが必要な時はスマホで僕に連絡シ。捕獲できたら、僕宛に2コール鳴らして切リな。麗孝ヲすぐ行かせるけ。……じャ、えるちゃんの働きに期待しとるよ」
「……はい、」
……期待してる、なんて。睿霸、言うんだ。
本当にその人の口から、そういう類の人の口から出た言葉とは到底信じられないけれど、わたしの耳は嗅覚と同じくらいいいから、聞き間違えたとも思えなくて。
さわり、と心が騒ついたのをかき消すように、ドアが閉まり切る直前、言おうと準備していた言葉を滑り込ませた。
「あの、ちゃんとあの人のことについて教えてくださいね?」
わたしの言葉に睿霸はにこやかに頷き、閉じられたその車は瞬く間に目の前からいなくなった。
「……質問座談会より、個人的には捕獲の段取りを決めたかったんですけどね」
そうぽつりと呟いたけれど、心の隅っこでは、こんなのもたまには悪くないと思っている自分が、いる気がした。



